インドネシア北西部に位置するリアウ諸島州。中華本国やベトナムなどの漢字圏に近いその州では、世にも奇妙な、唯一無二の独特な書きまわしが存在する。リアウ変文体だ(gaya yang tidak biasa riau)。
リアウ諸島州ではこれまで、アラビア文字やバリ文字等、様々な文字が使われてきたが、そのどれもで漢字の様な変文体が使われている。しかし、ラテン・インドネシア文字以外での変文体使用の文書は極めて少ない。
しかし、漢字に見えるこれらは実は漢字では無い。漢字というのは一文字一文字に意味が込められているが、これらは表音文字化して字義を持っていない。リアウ諸島人にしてみれば、これらは"ラテン・インドネシア文字のちょっと形が変な奴"という認識でしかないのである。
上の画像はリアウ諸島地域で、独立直後当時にビラとして撒かれたインドネシア独立宣言の画像である。bangが邦、niが尼、siが志、yangが央、singが心に置き換わっている。しかし、最後のbangsaは変換されてない辺り、その変換基準はとても曖昧極まるものなのだろう。
上記の他にも、ciが幾、paが巴、saが左、riが里等、実に様々な変文体が使われている。一部の地域の公民館や役場には、“kepul 里au”(リアウ諸島州)という表記も見られる。
因みに、例外的に「大」(besar)、「小」(kecil)、「天」(langit/空の意)は発音に関係なく、字義を持って使用される。
現在でも五十代以上の人は盛んに用い、若者もかなりの人数が使用している。極まれに行政文書でも使用されることがある。あくまで、ラテン・インドネシア文字の一つとして扱っているから、特に何も疑問に思わないのだろう。
中国人はとても混乱する事間違いなしの、とても興味深い文化だ。
コンパス・ジャカルタ紙日本語版
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