亡くなった首相の愛犬とは?

 今日首相本人のツイッターアカウントで、愛犬ムスタファ(mustafa)の死が伝えられた。外交や演説の場でしばしば首相の横で見られた日本犬(柴犬)である。今回は、ムスタファと首相の関係について、首相本人の著書「選ばれし者、ムスタファ」より振り返る。

出会い

 今から二十年前、首相は政治家人生で一度だけ連続で大国民議会議員選挙で落選したスランプに直面していた。当時、政治家人生の進退を考えていたという。著書では「これからどうしようか…。」、「政治家を辞めるべきか…。」、「辞めた後どんな職に就こうか…。」、「もし変な職場に就いたら家族をどう養おうか…。」等々、多くを悩んでいた時期で、またヤケクソになり一人で大酒に浸っていた恥ずかしい時期だという。

 ある日、ジャカルタのグロドックのチャイナタウン(巳胡中華城)でいつもの様に一人ヤケ酒に浸り、街の喧騒と光を背に浴びる寂しい夜の帰り道で、気が付くと一匹の子犬が付いてきていたという。彼は幼い頃に猫を飼っており、生き物を飼う事の大変さをよく知っていた。その為、どうにか巻こうと走ったり、餌をやってその隙に逃げたりしたが、子犬も諦めず追いかけてきた。家に飛び込み、酔いも覚めた一時間後(首相は酔いの覚めが早い酒豪として有名)、外から犬の声がして「まさか」と思い家族と共に外を見ると家の前に例の子犬が座っていたという。

家族会議の結果、この犬を飼う事になった。

 犬の名前は「ムスタファ」に決まった。アラビア語で「選ばれし者」の意味であり、彼が最も敬愛する政治家であるトルコのムスタファ・ケマル・アタテュルクからあやかった。また、次の選挙で彼が「選ばれる」様にという願いもあったという。犬種は何故か日本産の柴犬で、彼は恐らく華僑が捨てた柴犬の子供だろうと考えているという。

その後

 ムスタファは非常に物分かりが良く、躾も早く済む賢い、育てるのが大変楽な犬であった。冗談を良く飛ばす彼は、「いずれ言葉を話すのではないかと、恐怖を感じていた。」と話している。

 次の議員選挙では、ムスタファと共に演説に回り、見事当選し政界に復帰。演説で緊張した時は舞台袖から顔を出すムスタファを見て和んだという。

 2005年の次期首相選挙では当時の最大野党である穏健左派党(現在の国民左派党)候補を打ち破り、2006年度からの首相就任が決まった。首相曰く、「あの時の奇跡の連戦連勝はムスタファと出会っていなければあり得なかった。」という。

 「もしあの時ムスタファを巻くことに成功していたら、今こんな立場で本を書いてないし、政治家でも無かった。かつては追いかけて来るムスタファを鬱陶しく思っていたが、今では目を合わせて笑い合うことも出来る。家族の一員だ。」と某ニュース番組のインタビューで語っている。

 今回の愛犬の死で、首相には更なる心労が掛かると思われる。少し休んでもらいたいものだ。

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