【社説】我が社には面白みが無いそうだ

 先日、清華の鄭報道官は我が社の記事に対し、「奇を衒うが全体的に不明瞭で面白みのない報道」という大変ありがたい貴重なご意見を下さった。

 ある程度の自由がまだある香港のメディア“香港新聞”はこれに対し、「今回の評価は、もはや辛辣な非難とかではなくただの自分の評価に過ぎない」という記事を書いている。

 そう言ってあげないで欲しい。鄭報道官はプライドが高いとか面白くないとか色々言われているが、強大な上司に虚勢を張れと言われているのだ。彼だって、家族や友人、同僚の為に頑張っているのだ。彼の気持ちは階級社会に生きる全社会人が共感すべきものだ。彼を攻撃すべきではない。

 さて、我が社に“清華外交部から”寄せられたご意見だが、確かに我が社にはユーモアが足りないかもしれない。あるいは価値観が違う、所謂“国の笑い”が異なるせいかもしれないが…。

 さて我が社は考えた。どうすれば面白い記事を書けるのかと。

 事実に対して中立なユーモアを混ぜるのは相当な高等技術が求められる。新聞社のユーモアというのはどうしても風刺となり、風刺となればどちらかの立場に偏らざるを得なくなってしまう。まして事実をユーモアによって捻じ曲げることは、今まで事実だけでも出来るだけ中立であろうとした我が社のモットー“右翼にも左翼にも”に反してしまう。

 こういうことだから、「面白みが無い」と言われてしまうのだろうか。

 なるほど我が社は事実をありのまま伝えていたから、この様なご意見を賜ったのかもしれない。今後は出来るだけ事実を歪めない程度にユーモアを入れようと思う。今後に期待して欲しい。

 あと、“奇を衒う”とは“故意に変わった言動をして他人からの注意を引こうとすること”らしい。我が社は事実しか伝えていない、変わったところはあまりない(はずの)普通の新聞社なのだが…。私の見ている世界が狭いのだろうか。少々勉強不足なのかもしれない。

 次に、国の笑いが違うとなれば、どうすれば良いのだろうか。清華は共産党の一党独裁体制下で、その頂点のエンペラー遠平には、情報をも統制する大きな力がある。という事は、面白い記事を求めているのは鄭氏でも外交部でもなく遠平であり、その遠平の厳しい厳しい検閲を潜り抜けた選りすぐりの、とても面白い記事しか清華にはないはずだ。なるほど清華の新聞社を真似れば、遠平も外交部も面白がるはずだ。清華人民はどう思うか知らないが…。

 しかし、それでは事実が書けない。意見は仕方ないとして、出来るだけ中立な事実を伝える使命を負う我が社には出来ない。清華に我が社があったとすると、面白くないからすぐに蒸発させられてしまうだろう。

 まぁ大陸に向けて発行するわけではないから、各国の笑い、特に資本主義民主国家から見て異世界の価値観である共産主義独裁国家に対応することは出来ないかもしれない。こればかりは申し訳ない。勘弁してほしい。期待しないで欲しい。

 こんなことだから、我が社の新聞は面白くないという評価を賜るに至ったのだろう。

 申し訳ない。今後は事実に支障をきたさない程度で、少しユーモアを増やそうと思う。

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