アブド・ソイセノ新首相、国家と民族への忠誠誓う

 ドゴロニデ元首相の後任を決める国民選挙でアブド・ソイセノ元副首相が当選し、アブド・ソイセノ首相が誕生した。

  初仕事となる国民を前にした就任演説は、前代未聞の屋外ホールを使用し、それも夜に幻想的で煌びやかな光と共に行われた。演説は「私はインドネシアを愛している。私は顔も身長も、巻き毛の髪のあたりもアラブ系だ。もしかしたらトルコ系かもしれない。」という出だしから始まり、先祖が百年前にオスマン帝国からの移民の薬屋だったことから入った。そして、なぜアラブ系かトルコ系か分からないのかという歴史的経緯を説明し、「歴史が嫌いな方、世界史の時間にずっと寝てた方には申し訳ない話をしてしまった。」と初っ端からジョークを飛ばした。

 その後「インドネシアで生まれ、インドネシア社会で育ち、インドネシア語を母語とし、インドネシアを愛している。祖先がいた中東は悲惨な事になっている。中東での兄弟達同士の戦争は悲しく虚しいものだ。それに援助はしたい。しかし、援助こそするものの私はその戦争で泣くことは出来ない。故郷でも無いし、そこに友人もいない。確かに、風貌から見て取れるように私にアジア系の血が少なめなのは確かだ。どうか国民の諸君、私を信用してくれ。私はアラブ人ではなく、インドネシア人であることを!」として、改めてインドネシア国家・民族への忠誠を誓った。

 また、外交については「外交というものは、決して安定することのない国際社会の中で揺れ動くものなので、一概にここで言えることでは無い。状況次第では、ここで堂々と発表した翌日に方針転換を余儀なくされる事もあるかもしれない。そうなれば、私は全国民に噓をついたことになる。だからここでは発表しない。」として深い明言を避けるも、「一部の過激な者達が、他国を侵略すべきとの意見を言っているが、実に愚かな考えだ。」と過激派の意見には同調しない平和主義路線で行く事を強調した。しかし、「インドネシアは、一度勝ち得た栄光の歴史である独立を、決して手放すことはない!(中略)しかし極端な話だが、もし、もしどこか余所の植民地主義国の横暴な軍隊が、何もしてないにも関わらず植民地化を狙って神聖なインドネシア国家に一歩でも攻めて来たら、対話などせず迷わず私は抵抗を選ぶ。インドネシア民族は、一度掴んだ栄光の独立を離さないぞ!」として、独立を脅かす平和的ではない者達には容赦しないという意思表明を行った。

 最後に、「インドネシア、ムルデカ!(独立万歳)」と締め括った。議場からは大きな拍手に沸いた。

 社会学者、宗教学者、幸せ人間党党首、大国民議会議員のマハー・セパー・バガバクサカ氏の分析によれば、「彼の就任演説と全く同じ状況、夜に光と共に屋外ホールで演説を行ったものが前にもいた。ヒトラーだ。彼と同じく、アブド・ソイセノ首相は変人で有名だが頭もキレ、人心を掌握するのに長けている。幸い彼は何十年も前から自身を平和主義者、保守の中の穏健左派と語り、他国に侵攻すべきと言う極右をバカ者呼ばわりしてきた。しかし、もし他国が侵略してきた場合はかなり過激な方法に早い段階で出るだろう。もちろん国家を守るのは当たり前なのだが…どうも嫌な感じがしてならない。188㎝の巨体から発せられる、あのギラついた目が笑ってない満面の笑みが怖いです。」と、少々の懸念は拭い切れないと話した。

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